長谷川建築デザインオフィス株式会社

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住宅力

生活カルテを作る

      

 

土地を感じあうことから、計画ははじまります

間取りへの要望に先だって、設計してくれる方とともに「土地」に立って、太陽の大きな動きを感じあい、風や周囲の緑を感じあう。 もうそこでスペースの在りようは浮かび上がりはじめます。それは「居間」とか「食堂」といった部屋の名称ではなく、冬のこの時間には、隣家の影がここまでのびるのか、 といった事実の他、ここに座ると緑がきれいだな、ここには冬場ポカポカと日溜まりができそう、といった初原的な「場」のイメージです。紙の上の小さな世界に入る前に土地を感じあうのです。

 

要望は部屋名で伝えないほうがよい

さて、具体的に要望を伝える時期になりました。そこで建て主さんに申し上げることは、とにかく今現在お住まいの家で打ち合わせさせて欲しいとお願いします。しかも片付けないで下さいと。 ありのままを見たいのです。きっと現在の住まいが気に入らないからこそ新しい住まいを考えているのでしょう。でも、気に入っているいないに関わらず、 人はそれなりに、たくましくその環境を「自分化」します。それがマンションでも、アパートでも戸建てでも、借家でも。そしてそこで暮らしいている姿を細かに聞きます。 ここで混同してはいけないのは、これからの「新しい家」のことはひとまずおいておいて、今在るその部屋と家具いう制約のなかでの「いままで」のみを聞く。 具体的に働いている日、お休みの日、朝から寝るまでの「行為や活動」を自己批評なしに、ありのまま聞きたい。私達設計家はみなさんと一緒に暮らしていませんから、 住む方々のこれまでを十分共有しなければなりません。遠回りのようでいてこのプロセスで、住む方も気がつかなかった発見がきっとあります

 

部屋名はあとから浮かびあがる

さあ、そうした「今まで」そして「今」というものを具体的な行為や活動として共有して「これから」に結んでいきます。が、ここでも「居間は十畳」くらい欲しい、 という表現で要望を伝えるのは好ましくありません。イメージがシュッとしぼんで伝わってしまうからです。よく言われる「部屋名」は白紙にしてしまいましょう。 それではどのようにつたえるか。生活の事実として、「行為や活動」を中心につかむことをお薦めします。

 

いろんなレベルの生活のかたち

生き活きとした(生き生き活き活きの造語)暮らしにおける活動や行為、姿勢をつかまえるヒントとして

以下が一例です。生活はばらばらではなく複合的ですから

これらの多様な組み合わせも考えられます。

 

だんらんのかたち

だんらんを楽しむ。ことさら日々意識しないでいる一家団欒、夫婦団欒の時間。自分にとって団欒を感じるときはどういう時なのかを見つめてみましょう。 たとえば「家族そろっての夕食や休日のランチを介しての団欒がかけがえがない」などなど。

 

くつろぎのかたち

ごろ寝スタイルが一番くつろぐのか、ソファで寝転ぶのがくつろぐのか。とにかく他人には見せられないかっこうで、誰しもだらだら疲れたからだをくつろがせ癒します。 その姿勢は子供と大人では違うし高齢者もちがう。もちろん夫婦でも違います。ソファなどの道具を用いてくつろぐこともありましょう。その道具そのものも自分のくつろぎにフィットしているか検証します。 場所としては、それが寝室であるのかもしれないしお風呂であることも。たとえば、「湯につかりながら太陽のひかりを浴びながらくつろぐ」とか「晩酌をごろ寝をしながらテレビを見てくつろぐ、、」など。 「部屋名」に結びつけずに、くつろぎの姿勢や時間などを掘り下げることで「あなたのくつろぎ空間」が孵化しはじめます。

 

食のかたち

朝の食事はとにかくスピーディーにこなさねばならない方、作りながら食べるがこれまでのスタイル、という方も。キッチンは外の空間にも中の空間にも連続していた方がベターなライフスタイルもありましょう。 例えば「テレビという装置を軽快に壁に吊るしながら、それはウェブサイトにも開かれていて、それを見ながらクッキング」など。作る、食べるを中心に掘り下げます。

 

就寝のかたち

子供が小さくて早く寝る、けれど御主人は真夜中に帰宅。寝る前にベッドで本を読む。しかしとなりにいる人には眩しいだろうから我慢。我慢するしないはさておき、 これからの寝室のありかたはベッド二つのウォークインクロゼット付きという定番スタイルではないはず。例えば「夫婦すれぞれのデスクコーナーがあり、寝転びながらシアターを見る、そして、 夫婦別寝にもなったり、、、」これまでの問題点を洗い出すことは、新しい寝室の在り方が生活の中に潜んでいることに気がつきます。

 

育みのかたち

子供の部屋にダイレクトに現れますが、そればかりでなく住まい全体に「子供をどのように育むか」はデザイン化できます。また、ペット、植物、命あるものを育む視点で見つめ直します。

 

おもてなしのかたち

昔は客間とよばれていましたが、宿泊客や気のおけない仲間とのコミュニケーションの在り方、そしてその頻度なども客観的に見つめます。例えば「観葉植物が大好き、これを育み、 その植物が私の作品、その作品を見せることが私のおもてなしの気持ち、だから土足のまま入れる土間リビングがもてなし空間だ、、、」など。

 

装いのかたち

衣服を着替える行為もみつめれば一筋縄にはいきません。勤めから帰る、玄関で靴を脱ぎ、さて自分の部屋に入る、部屋着に着替える。その脱いだズボン、もちろん即クリーニングではないから、 吊るす。かといって少し湿っているのでクロゼットにはいれられないので鴨居なり長押/なげし/あるかどうかわかりませんが/に一時吊るす。こんな日常的な着替えに伴う一連の行為をみつめると、 その問題と問題解決が見えてきます。

 

 

カルテをつくる

すまいづくりの方向付けを行うために、依頼主ごとに、それぞれユニークな要望を列挙してくださいますが、先述したように、 できればイメージが広がる方向に向かいたい。それには、初期の段階で、あまり「物」や「部屋名」に即さないこと、と記しました。 カルテの一例を掲載しておきましたが、皆さんなりに、活用ください。 根底には、これまで記した、生活の「いままで」をすくいあげ、新たな「これから」重ね、ふさわしい空間をあぶりだすメモのようなものです。

 

 

 

カルテ1

このシートは一般事項と敷地の覚え書き。敷地に関しては周辺の影の調査をあわせて行います。

 

カルテ2

このシートは外観のおおきなイメージや好みを、仮にメモするシート。同居に関しては自分の親世帯との

同居がないとしても、自分の子世帯との未来をどう考えるか。

 

 

カルテ3

現在暮らす場所の評価できるところや不満な点などのメモ。 このシートの記入項目は「平面図」や形に

現れにくいが、とても重要です。

 

 

カルテ4

家族の年令の変化をつかむ。なにより、子供の成長の変化を具体的に数字しで認識しましょう。部屋名

を列挙するまえに、「これまで」の生活をしっかり見つめ、生活のクセを事実としてすくいあげてみま

しょう。どのような姿勢でくつろいできたかできるだけ具体的に。欄が小さいのですが、ふだんのくつ

ろぎを写真に撮ってみてもよい。様々な「暮らしのかたち」を浮かび上がらせることが、どこにもない

住まいへの入り口。活動シート|別紙配布と連動して柔軟に考えます。

 

 

カルテ5

おもに個々人の部屋に帰着する調査。以外にわすれがちなのは「着替える」場所。

家庭での子供の勉強のありかたや、趣味なども、「生活の事実」としてしっかりすくいあげて、新しい

住まいに活かしましょう。

 

 

カルテ6

いよいよいろいろなスペースの在り方を考えて行きます。 これまでのカルテ記入で考えたことを前提

に、新たな生活空間を描いていきます。

住まいづくりには予算が重要。それは「家の大きさ」と「収納力」が大きな影響を及ぼします。

希望のみ列挙すると、面積は再現なく増えてしまいます。 あらかじめから予算に応じた部屋の大きさ

と家全体の大きさ、そして収納を含む家の「ゆとり」もバランスよく考えましょう。大きさの概算が

つかめます。

 

 

カルテ7

暮らしをサポートする部屋への希望。かなり重要です。しつらえる物もさることながら、他のスペース

とのつながりもメモするとよいでしょう。

 

 

カルテ8

家具リスト。これは手持ちの家具を知るばかりでなく、現在お住まいの固定収納のなかにどれだけの物

が詰まっているか、そのボリュームを知る調査です。移動収納に関しては破棄してしまう家具もメモ。

後日、設計者の訪問時、再調査します。新規購入の場合も仮の大きさでよいから記入します。押入にあ

るもの、クロゼットにあるもの、「箱もの」はおおむね列挙。

 

 

自信をもってみなさんの生活から創っていく

 

まず生活の「いままで」を、よく「すくいとって」みましょう。

 

そして「部屋名を何畳」と要望する前に「行為や活動や想い」を伝えてみる。

その後「これから」の希望やイメージを重ねていきます。

 

その手助けするツールがこのカルテです。

そこへ新たなイメージを重ねていく。ここでは、ことばではなく、ビジュアルをふんだんに使いたいところ。

ビジュアルについては、 こちらをご覧下さい

こちらも参考になるでしょう。

 

このプロセスをおさえると、これまでの生活にきちんと連続しながらも、

思いも寄らなかった部屋、愉しい住まいの在り方、ライフスタイルやストーリーが浮かびあがります。

それは間違いなく、どこにもなく「新しい」のです。

 

コラム|デザイン|形|そして|性能

 

私の事務所に設計依頼に訪れる方のそれまでの経緯をお聞きしますと、共通した経験をお持ちです。まず、住宅雑誌をさほど真剣にではなく購入、 あるいは図書館などで見る。次に住宅展示場の見学。相当数を回っている方もいらっしゃる。そして、また、雑誌や本に戻っていろいろと思案。 結果ある意味なにがなにやらわからなくなって、こんどは雑誌を建築家探しの観点から「読み」始める。それは、 結局自分の家は他のどこにもなく自分達の中にあるとの「気付き」が既に芽生えているといえます。 そして、若干デザインとしてこれはいいなというぐらいに写真は見るけれども、その建築家が何に深いこだわりを持っているかの観点から記事を読んで、 共感した方に数人電話する。 会ってみる。こんな経緯を踏んでいらっしゃる。もちろんデザインだけを何かで御覧になってお越しになる方もいないではないですが、 割合としいては大変少ない。象徴的なエピソードとしてこのホームページ上の住まいの事例にもあるこの住まい のオーナーはある雑誌で私どもの和風色の強い住まいを見て訪問される。 しかしできあがった住まいの外観は、かなりモダーンで内部は北欧テイスト。すなわち、このお客さんにとっては、どの雑誌を見ても百花繚乱、形様々であるから、 形ではなく、住まいの「性能」にこだわっている建築家を探しあて、自分達の想い(夫妻はオリエンと呼んでいた/オリエンテーションのこと)をぶつけ、 デザインしていただこうという考えの持ち主でした。

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