風と呼応 −風環境を観察
山から吹き下ろされてくる冬の冷たい厳しい風、凄まじい空っ風のこともありますしあるいは吹雪きであるかもしれない。冬のこうした厳しい風は防ぎたいし、やり過ごしたい風です。一方夏場は風が大変いとおしい季節。南東の川向こうから、あるいは海や山から顕著に吹く風、ところによっては尾根にそって上昇してくる風などなど、地域性というより地勢によって、随分と風の流れは違うものです。急に今までにはない風が吹き始めた、どうも近所のあの高層マンションが風向きを変えたらしい、そんな話も耳にします。いずれにせよ、現在お住まいの建て屋を壊し新築を考える方の場合、夏冬と顕著な風が吹く地域に住んでいる方ならば、そこに長らく住んできた経験から、新しい住まいにそれを繁栄させることは容易です。そうでない方は一年中そこで風を感じる間もなく計画に取りかからねばならないでしょうから、知らない場所ならばなおのこと、御近所の方に聞いてみることです。けっこう良い情報が入るものです。「風はわからんが、花火が見えるよ」なんていう副産物を得られることもあるのです。
通風の基本 −南北に通る風の背骨をつくる
地勢や地域による特殊で顕著な風の流れは別にして、東西に細長い日本列島では概ね南北の風をつかまえ「南北通風」を促進せよ、とよくいわれますが、やはりこれも夏場、風の欲しい、窓を大きく開放したい季節を指しています。なぜならば、湿気の多い季節も夏ですし、同じ湿度でも体感として清涼感を得る自然の力は「風」しかありません。エアコンで得る涼しさを風でこしらえることは不可能ですが、エアコンの刺すような冷たさより、むしろ多少の湿気を感じながらも「木陰」に佇み吹き抜ける風の爽やかさに共感が寄せられる。これはエコロジストならずとも、私達日本人の皮膚感覚や感性が、自然の風が本来持つ「揺らぎ」と呼応するからではないでしょうか。しかし、なぜ、現代の住宅は「木陰の涼しさ」さえ作れなくなってしまったのか。理由は簡単で「風のバリア」が家のなかに、家の外に多く存在するからです。隣地が迫って境界塀が家のすぐ横にある。これではいかに風を抜こうともママならない。間取りを考える際、敷地の北側に、風抜けを促進する余白の「庭」をつくりましょう。風抜けが全く変わります。後からではこしらえにくいので、最初から計画です。

風の流れは立体的にも思考

基本は南北通風の強いの「軸」をニ、三本作ること。これも偶然にはできません。積極的に風を通す気持ちで間取りを進めないと、南から入った風が東西に振り分けられる風の道しかで得られないプランになってしまいます。北の窓は小さくてもかまいませんから南北の「風の軸」をつくる。そうすると上図左のように東西の窓から、風が勢いよく引き込まれます。通風のポイントは、この引張る力を利用して引き込む。これを「負圧の利用」といいます。
そして、応用として吹抜けなどを使った、縦に抜けていく風。これはすこぶる効果的。風は高いところから抜けたがっていますまた、ニ階の窓は腰窓と決まっているわけではないのですから、積極的にテラス窓にしてみましょう。2階の床やベッドに寝転んでいても風を感じられたらば通風計画もかなり上手くいった実証です。このほか、見えない「壁の中の風通し」も重要ですがこれはどまだんシステムの項に譲ります。
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